人が多すぎて太郎さんを見失いそう。
「太郎さんっっ!待って下さい!!」
聞こえてるはずなのに、止まらないどころか振り返ってすらくれない。
「あれー?サキちゃんついてきてるー?」
「さっきから待って下さい、って言ってたじゃないですか。でも太郎さん、全然とまってくれなくて…」
太郎さんは、いきなり止まってクルッと振り向き、呑気にそう言った。
「……ねぇサキちゃん。
まさかとは思うんだけどさぁ…“太郎さん”って僕のこと?」
「え?他に誰がいるんですか」
なんで太郎-?
サキちゃんひどいなぁー。僕って太郎って感じじゃないでしょ、どう見ても。
なんて言う。
言ってる意味がわからなかった。どう考えても一人しかいないのに。
「だって太郎さんが、僕の名前は山田太郎だよって前に言ったじゃないですか、自分で」
「えー、ウソだー。
僕がそんな悪趣味な名前名乗るわけないでしょ」
「でもばばぬきしてる時に確かに山田太郎って…」
太郎さんはんー、と考えて