とっても、悲しかった。


目的地に近づくにつれて人通りが増えてきた。
やっと着いたそこはたくさんの屋台と人で溢れていて、
むせかえるような熱気だった。
提灯ごしにゆらゆらと揺れるオレンジ色の暖かい明かり、いろとりどりの女の子の華やかな浴衣、歩くたびにどこからか漂ってくる、屋台の食べ物といろんな香水と汗の混じった匂い。
近所の子供のはしゃぎ声。


ゆいとくんは必死に、爽馬さんの腰にしがみついて押しつぶされないよう頑張ってる。
爽馬さんは、そんなゆいとくんをさりげなく自分の腕で守っててお兄ちゃんと弟って感じだった。

やっぱりゆいとくんはみんなの弟的ポジションなんだ、ってぼんやり思った。




人の波に潰されないよう、はぐれないよう、優さんに握られた手首に全神経を集中させる。


そんな私の反対側の優さんの腕にしがみつく留美を、人の波から守ろうと留美の前を歩いているのは信吾さんだ。
そんな彼の背中が、まるでお姫様を守ろうとする、騎士みたいに見えた。



でもきっと…肝心のお姫様は、騎士のことなんて眼中にない。


そう思うと、胸がチクリと痛んだ。
自分のことじゃないのに、なんだか無性に悲しくなった。
信吾さんにいい印象なんて持ってないのに、
それでも、留美に関して“健気な”彼を可哀想だと思った。


自分だって人のこと言えるような状況じゃないのに。むしろ私の方が可哀想なのに。
可哀想な仲間探しをしてる自分が嫌になった。


思わず自嘲的な笑みがこぼれる。