めちゃくちゃびっくりした。いるなんて思わなかったから。
王子様の面影なんてどこにもない優さんは怖いなんてレベルじゃなかった。
謝らないと、と思ったけど頭の中がこんがらがって声がカスカスででなかった。
そんな私の答えを催促するように、冷たい目で見つめたまま優さんも何も言わなかった。
「………………」
「………………」
「…………………」
「……なんで逃げた?」
長い長い、沈黙の後のやっぱり冷たい声。
どのくらいたったかわからないけどそれはとても長く感じた。
「ちっ、違います…、逃げようなんて思ってません」
「じゃあ、なんで店にいなかった?」
「…た、たまたま太郎さんって人に会って…すごく暇だからちょっと付き合ってって言われて
わ、私は忙しいって断ったんですけど…」
「…へぇ。それでオマエは流されて馬鹿みたいについてったんだ?」
「……………流されて、っていうか…」
ちょっと好奇心が出たから流されて、っていうのはちょっと違う。
でも太郎さんに断らせない雰囲気があったのも事実で、
「………すみません」
「……………………」
「……………………」
「…………………で?」
「…それで、ついてったらトランプすることになって」
気付いたら結構時間たってて。
「慌ててお店に戻ったんですけど、車がなくて。なっ、ないのは当たり前なんですけど、
…すみません。」