外の車の中でおじさんが待っていたけど、こっちに気づいてないようだった。
ちょっとした好奇心からか、前を通るとき私も何も、言わなかった。
戻らなきゃと思いながらも何も言えず、ついたのはマンションだった。無造作に脱ぎ捨てられた服、きつい香水のにおいに顔をしかめる。そんな私を見て
「ゴメンんねー。ここさっき一緒にいた子の部屋なんだよねー」
全然申し訳なさそうに笑う。
近い場所の方がいいでしょ?なんて言ってる。人の部屋に、さっきあった子を勝手に入れるなんてこの人は頭が可笑しいんだろうか。
しかも女の子の部屋っぽい。
「あ、別に彼女じゃないよ?」
ベッドに腰掛け、それよりも、ばばぬきとしちならべ、どっちにする?
とトランプを取り出し、私に微妙すぎる二択を投げかける。
ごめんね、今これしかないんだよね、と。
トランプなんて、何年ぶりだろう。何年ぶりかわからないくらい懐かしいのに、全くやりたくならない。