「ねぇ、これとかどう思う?」
気づかないうちにこっちまで来てたらしい留美に、いきなり話しかけられた。
手にはワインレッドのワンピとレースワンピ。
「…可愛いと思う」
「知ってるよ!だから選んだんだし!!そうじゃなくて、どっちが似合うと思う?」
「そっち?かな」
どっせちでも可愛いけどって、右のワインレッドを差すと留美は納得いかないって顔した。
「えー、ちょっと真面目に選んでよ、早すぎるって」
「んー、でもどっちも似合うと思う…」
「知ってる」
だから悩んでるんじゃん、と。
もー、どっちも可愛いくて選べない、って鏡の前で悩ましげな声をあげる留美に、こっちに来た信吾さんがじゃあもうお前両方買えよと留美からワンピースを取り上げた。
あの後の留美の機嫌はすこぶる良かった。帰りの車の中でのテンションが異常に高かった。