千暁の話はこうだった。
勇は気付いていて、ずっと何も言わなかったらしい。俺同様、樹理にやんわりと拒否されたから。
けど、今日樹理の脚に痣を見つけてしまい、彼の沸点が爆発した。
一人一人平手打ちしたそうな。
しかも思いっきり。
彼は元々気性はどちらかと言えば荒い方だった。
ただ、リーダー気質があったのか、樹理やら千暁やら俺の保護者になろうとしているうちに、今の穏やかな勇が出来上がった。
素質はあるのだ。
“…先輩方、樹理に何してきたか分かってるんですか”
低い声が教室に響いた。
嫌がらせをしていたと思われる犯人方は勇の前に座り込んで泣いていた。
他の三年生はみんな教室の淵の方に避難していた。賢明な判断です。
“ごっ、ごめんなさっ、ぃ…”
“俺に謝罪する意味が分かりません。樹理に謝ってください”
“あっ…うぅっ…”
“下らない噂を広めて、何がしたかったのか知りませんが…、これ以上樹理を傷つけるつもりなら、容赦しません”
淡々と述べていく。
リズムよく。
“…一生消えないような傷をつけてやるからな”
ひぎゃ。
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