下駄箱が荒らされてるのは日常茶飯事だったし、酷い時は体育の時間をねらって制服切り刻んであったなぁ…。
あぁ、あの制服思い出しただけで身震いする。
デマの噂も流され、(どこから入手したのか謎だが)樹理の携帯にひたすら中傷メールが送られ続けたりしていた。
それでも樹理は俺たちの前では笑っていたし、学校ではいつも通り過ごしていた。
上履きがなくても来客用のスリッパ履いていたし、制服を切り刻まれた時もジャージを着ていた。
別に気にしない、と言っているかのように。
――…
“あれ?なんでジャージ?”
“…切られてたから”
“は!?”
“着れる状態じゃなかったし”
“…誰がやった?”
“先輩達”
“名前”
“いっぱいいすぎて、覚えてない”
学校では無表情の樹理は、その時も相変わらず無表情で。
でも、俺には泣いているように見えた。
“一人でもいいから。名前教えて”
“…”
“樹理”
“涼が言っても酷くなるだけだよ。火に油を注ぐだけ”
“…分かってるけど、このままやられ放題なんて許せないよ”
“私なら大丈夫だから…”
滅多に笑わない彼女が、力無く微笑んだ時、自分が必要とされていないことを悟った。
それが本当に悔しかったんだ。
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