「勇、数学の宿題やった?」


「見せないぞ」


「えっ!!」


「自分でやらないと意味ないだろ?」


「分かんないんだもん…」


「教室でやるぞ」


「はぁい」

嬉しそうな顔しちゃって。魂胆が見え見えだよ~。

勇の前だとこっちまでふやけるんじゃないかと思う程の笑顔を彼女はする。
それは勇以外には絶対に向けない。


惚れた男の前では可愛くなるもんだよね。



普段は勇、勇と子供のような樹理だが、学校だと一切そんな姿は見せない。
まず、学校で俺達以外の人間と話さない。目も合わせない。

教室でも、静かに本を読んでいるか、友達と喋っている勇の隣に引っ付いて寝てるかくらいだ。
彼女の学校生活には“青春”のせの字もない。


話しかけるなとオーラが出ている。あんまり笑ったりもしないから、周りも積極的にいけないらしい。

そんな樹理が心配で勇は、樹理から目を離さないし、俺も一日一回は教室まで喋りに行っている。


…過保護だな、とは自覚してます。


下級生の立場だった時は、それが原因で先輩達に目つけられてて(イケメンですから)、それはそれは大変でした。

漫画みたいなことって、あるんですね。


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