「一緒に行こうよ。樹理が予約してくれたんだから」


「だってデートなんでしょ…」


「うん。だけど、断る。だから、食べに行こうよ」


「…」


「ね?」

俯いている顔を覗き込むと、泣く手前5秒前。
あ、マジ泣き久しぶりに見るかも、と思ったけども、結局涙は流れず、実に頼りない顔で彼女は言い放った。



「最初からそう言え。ハゲ」


これが樹理だよね、うん。



「ごめんごめん」


「下僕がご主人様に逆らうなんて、ふざけんな」


「はい」


「顔キモい」


「うわっ!!ひどっ!」

いつも通りのやりとりをしていると、勇と千暁がやってきた。
俺達の顔を見て、仲直り(?)したと判断し、樹理に“良かったな”と言って頭を撫でていた。

まぁ、勇が来た瞬間、乙女化してました。


「二人は行かないの?」


「行くよ」

「行きますよ」


「なんだそれ。俺だけ知らなかったのかよ~」


「言うタイミングなくて…」

昨日言おうよ。
夜話してたじゃん…。
超どうでもいい話してたじゃん。

樹理の頭の中は俺には理解不能。



「あぁ~早く放課後にならないですかねぇ」


「気が早いぞ、千暁」


「だって楽しみで」


「私も~」


「まぁ、俺もだけど」

笑ってる彼らを見てると、女の子とのデートとかどうでもよくなる。


彼らは俺にとって、かけがえのない存在だから。


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