ん…?
寝返りがうてない。
何かが体に巻き付いてる…。暑い。



「樹理…」

しっかり俺に抱きついたまま、まだ夢の中にいる女王様を見る。

眠ってる顔は女王様よりお姫様なのに。実にもったいない。


「樹理ちゃ~ん。もうそろそろ起きないと~」

そっと髪を撫でてやると、小さく声を漏らし、更に強く抱きついてきた。
なんでこんな暑いのに、抱きつけるんだろう。癖って恐ろしい。


きっと彼も昨夜彼女にこっぴどく説教して気まずいはずなのに、癖で彼女の家に迎えに行っているころだ。

そこで彼女の母親から俺の家に行ったと聞き―…






「樹理っっ!!!!!!」


ほら、来た。



「ん~…」

呑気に寝てる場合じゃないですよ、女王様。


「!!おまっ…!なっ!…えっっ!」

恒例行事に毎回慌てすぎだよ。


「おはよ、勇。今日もご苦労様」


「涼ーーーーっ!」


「はい」


「お、お前達はもう18なんだぞ!!こ、ここ恋人でもないのにっ、そーゆーことは控えろって言ってるだろう!」


「顔真っ赤だから!それにこれは樹理からであって、不可抗力だって!」


「早く離れなさい!!」


「聞いちゃいない…。…樹理、起きて。勇が来たよ」


「!勇!!」

ぱちりと瞼が開き、大きな瞳が俺を通り越して、勇に向けられる。
その瞬間、条件反射のように俺の体は吹っ飛ばされ、見事にベッドから落ちた。

それなのに、二人とも何も言わない。



俺の存在完全無視です。


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