同じ不倫でも



私の生まれた世界では



愛人が何人いても それが普通だった


だから父親にはたくさん愛人がいた


堂々と愛人は連絡してきたり



こっそりとか密会なんてことは無縁で


とにかく人の家庭を壊して


欲望のままに



ヘラヘラしているのが



私の中では愛人であり


不倫だった



父親の仕事関係の人達は



父親の愛人には従うことはなく



あくまでも


私の母親と私達子供を



優先する義務のようなものがあった


父親と一緒に暮らしていた時は



学校から帰ると



男の人達が長い列をつくり



私を見て全員


玄関にたどり着くまで


ひとりずつ


「お嬢様おかえりなさいませ」



と言ってランドセルを持ってくれて



こわれものでも 扱うかのように


優しくしてくれた



あの時はそれが



普通だと思っていた