ヴィゼは城の湿っぽい地下室に彼女を導いた。

 彼がその扉を開いたとたん、甘酸っぱいようなかび臭さが、メディアの鼻を襲った。しかも、目の前には異様な光景。それは、いかに気丈なメディアとて、立ちすくませるに充分だった。

 天井、壁、そして床をも破って、半透明の白い木の根、あるいは腔腸動物の触手を思わせるものが、突きだしていた。青白い鬼火のような燐光を発しながら、幾重にもびっしりと絡み合い、あたかも編み上げられた寵のようなものを型作っていた。

 それぞれの太さは、さまざまで大人の胴くらいのものから、絹糸のように細いものまである。互いにしっかりと絡み合っているために、長さは見極めることができなかった。

「あれが、君の求めるもの。あの水晶球の中に、王子の魂を封じ込めている」

 ヴィゼが相変わらずの無感動な声で言うと、その部屋の中央を指さした。
 彼が示した方に目をやると、そこだけ青白い燐光を圧して、金色に輝くものがあった。ロランツの魂を封じ込めた水晶球。たしかにメディアの求めるものであった。

 だが、目前の光景はあまりに異様すぎた。メディアは、きっとヴィゼをにらみつけると、問いただした。

「何なのよ、これ」