俺がそう聞くと、翼は真っ赤な顔をして―――――
「だってよお…
普段飛鳥って髪下ろしてんじゃん…。
けど今日ポニーテールだぜ…??
可愛すぎだろ…。
AKB48じゃねえんだからよー…」
…翼は飛鳥の次にAKB48が好きらしい。
「ポニーテールとシュシュだあ…」
勝手に妄想してる翼を置いて、俺は飛鳥のもとへ行った。
「きっと実波1位だよね!
楽しみー♪」
「ああ…」
俺もそう思う。
きっと…いや、絶対。
実波は1位だ…間違いねえ。
小学生時代は、実波のほうが俺よりちょっとだけ速かったもんな…。
そうこうしているうちに、次は実波の組。
『次の選手は、A団山内美香さん、B団渡辺実波さん―――――』
「実波頑張ってー!!」
精いっぱい応援する飛鳥の横で、いまだに妄想中の翼。
俺も…心の中で応援していた。
『用意…パアン!!!』
ピストルが鳴り、選手が一斉にスタート。
思ったとおり実波は…ぶっちぎりだった。
『B団渡辺さんぶっちぎりゴールです!!
タイムは…11.79!!!
全国大会制覇レベルです!!!
なぜ陸上部ではないのにここまで速いのでしょうか!
それにプラスあの整ったルックス、モテないわけがないです!!!』
…アナウンス野郎、最後の1行無駄なんだよ。
「実波すごい…。
全国大会制覇レベルだって…」
…そりゃそーだろ…
実波はな。
『選手が退場します―――
頑張った選手に大きな拍手を――――』
パチパチパチ…
ほんとすげえよ。
こんなに速いのに、野球部のマネなんてしてていいのだろうか。
陸上部でトップ目指したほうが…。
…でももうすぐ甲子園をかけた戦いが始まる。
実波なしじゃ、俺は投げられねえ。
実波に近くで見てて欲しいんだ。
体育祭終了後。
翼は…飛鳥を呼び出し、本気告白。
体育祭はというと、翼の見せ場は綱引きだけだった。
「翼…大丈夫かな…」
…実波が翼の心配をしてる…。
…やべえ俺、こんなことくらいで妬くなよ…。
「…あの2人両想いだし。
だめなわけねーじゃん」
やきもちと、実波を励ましたい気持ち。
強がりな台詞しか言えない俺。
いつも…俺はそうだった。
小さい頃から超モテる実波。
むかついて…苛々して。
実波は俺だけ見てればいいのに。
どれだけそう思っただろう。
「…実波」
「んー?」
俺は
いつまで我慢すればいい?
この気持ちを
伝えてもいいのだろうか?
「…俺、実波のこと好」
「「ただいまーっっ!!!」」
「「!!??」」
…いいところで帰ってきやがって…
(完全にカップルになったっぽい雰囲気の)翼と飛鳥―――――!!!
「そっっ、その手は…やっぱ付き合うんだよな!?」
手をつないで入ってきた翼と飛鳥。
そりゃもちろん…
「「付き合うに決まってんじゃん!!」」
「やったー!
よかったじゃん飛鳥!
おめでとう!」
「ありがと実波~!」
…告白邪魔しやがって………。
ま、何はともあれ、実波も幸せそうだし、いいか…。
俺もいつか、実波に告る。
絶対…告る。
- 実波side -
そしてついに、甲子園への切符をかけた県大会が始まった。
「…達也……」
初戦当日…いきなり強豪校の青沢学園(アオサワガクエン)と当たってしまった。
もちろんエースの達也がピッチャーをするわけだけど…
試合直前、静かにベンチに座り、気持ちを高めている。
「…っしゃ!」
達也はいきなり立ち上がり、そう叫ぶと―――――
「―――――――行ってくる」
とびきりの笑顔でそう言い残し、グラウンドへ走って行った―――――・・・
試合終了後―――――
「それでは1回戦勝利を祝って……」
「「「かんぱ―――い♪♪」」」
…ハイ、見ての通り…栄華の近くのお店で、祝っております。
「まだ1回しか勝ってねえのにどんだけ騒いでんだよ…」
呆れ気味の達也も、嬉しそう。
だって達也…すっごいピッチングして完封に抑えたもんね!!
自己最速の150キロも出たし…。
そりゃあ祝うしかないっしょ!!