◆◇遠い日の約束◇◆






俺がそう聞くと、翼は真っ赤な顔をして―――――




「だってよお…
普段飛鳥って髪下ろしてんじゃん…。
けど今日ポニーテールだぜ…??
可愛すぎだろ…。
AKB48じゃねえんだからよー…」





…翼は飛鳥の次にAKB48が好きらしい。





「ポニーテールとシュシュだあ…」





勝手に妄想してる翼を置いて、俺は飛鳥のもとへ行った。





「きっと実波1位だよね!
楽しみー♪」





「ああ…」






俺もそう思う。




きっと…いや、絶対。




実波は1位だ…間違いねえ。




小学生時代は、実波のほうが俺よりちょっとだけ速かったもんな…。










そうこうしているうちに、次は実波の組。




『次の選手は、A団山内美香さん、B団渡辺実波さん―――――』





「実波頑張ってー!!」




精いっぱい応援する飛鳥の横で、いまだに妄想中の翼。




俺も…心の中で応援していた。





『用意…パアン!!!』





ピストルが鳴り、選手が一斉にスタート。




思ったとおり実波は…ぶっちぎりだった。





『B団渡辺さんぶっちぎりゴールです!!
タイムは…11.79!!!
全国大会制覇レベルです!!!
なぜ陸上部ではないのにここまで速いのでしょうか!
それにプラスあの整ったルックス、モテないわけがないです!!!』





…アナウンス野郎、最後の1行無駄なんだよ。









「実波すごい…。
全国大会制覇レベルだって…」





…そりゃそーだろ…




実波はな。




『選手が退場します―――
頑張った選手に大きな拍手を――――』




パチパチパチ…





ほんとすげえよ。




こんなに速いのに、野球部のマネなんてしてていいのだろうか。




陸上部でトップ目指したほうが…。




…でももうすぐ甲子園をかけた戦いが始まる。




実波なしじゃ、俺は投げられねえ。




実波に近くで見てて欲しいんだ。










体育祭終了後。




翼は…飛鳥を呼び出し、本気告白。




体育祭はというと、翼の見せ場は綱引きだけだった。





「翼…大丈夫かな…」





…実波が翼の心配をしてる…。




…やべえ俺、こんなことくらいで妬くなよ…。




「…あの2人両想いだし。
だめなわけねーじゃん」





やきもちと、実波を励ましたい気持ち。




強がりな台詞しか言えない俺。










いつも…俺はそうだった。




小さい頃から超モテる実波。




むかついて…苛々して。




実波は俺だけ見てればいいのに。




どれだけそう思っただろう。





「…実波」




「んー?」





俺は




いつまで我慢すればいい?









この気持ちを




伝えてもいいのだろうか?




「…俺、実波のこと好」




「「ただいまーっっ!!!」」




「「!!??」」





…いいところで帰ってきやがって…




(完全にカップルになったっぽい雰囲気の)翼と飛鳥―――――!!!





「そっっ、その手は…やっぱ付き合うんだよな!?」





手をつないで入ってきた翼と飛鳥。




そりゃもちろん…





「「付き合うに決まってんじゃん!!」」










「やったー!
よかったじゃん飛鳥!
おめでとう!」




「ありがと実波~!」





…告白邪魔しやがって………。




ま、何はともあれ、実波も幸せそうだし、いいか…。




俺もいつか、実波に告る。




絶対…告る。










- 実波side -




そしてついに、甲子園への切符をかけた県大会が始まった。





「…達也……」





初戦当日…いきなり強豪校の青沢学園(アオサワガクエン)と当たってしまった。




もちろんエースの達也がピッチャーをするわけだけど…




試合直前、静かにベンチに座り、気持ちを高めている。





「…っしゃ!」





達也はいきなり立ち上がり、そう叫ぶと―――――





「―――――――行ってくる」






とびきりの笑顔でそう言い残し、グラウンドへ走って行った―――――・・・










試合終了後―――――




「それでは1回戦勝利を祝って……」





「「「かんぱ―――い♪♪」」」






…ハイ、見ての通り…栄華の近くのお店で、祝っております。





「まだ1回しか勝ってねえのにどんだけ騒いでんだよ…」





呆れ気味の達也も、嬉しそう。




だって達也…すっごいピッチングして完封に抑えたもんね!!



自己最速の150キロも出たし…。




そりゃあ祝うしかないっしょ!!