その後も、橘さんの家に見舞いに行く時、俺も一緒に行きたかったけど、唄が責任を感じ、ひとりで行きたいと言う唄に俺は何も言えなかった。
だから、自分自身に“今回は仕方ない”“唄を守ってくれた人だから感謝をしないといけない”と言い聞かせた。
それでも、ダメだった。
草野さんという人に誘われ、花火をしに行った時、まさか橘さんがいると思ってもみなかった。
何故か、唄が橘さんを気まずそうに見ているのを見て、俺は複雑な気持ちになる。
別々に花火をしていても、唄は暇さえあれば橘さんの居る方を何度も見ては少し落ち込んだ表情をする。
それを見て、心に何かが突き刺さる変な感覚に襲われる。
浩平が唄と2人で話たいと言った時は、何も思わなかった。
けど、橘さんが唄に話しかけているのを見た途端、その感覚が強まる。
2人が場所を離れ、暗くてよく見えなかったが、花火をしながら何かを話しているような雰囲気だった。
2人を見て、ようやくこの感覚が何なのか分かった。
橘さんに唄を取られたくないという“焦り”だ。
初めて会った時から、予感してた。唄は橘さんに惹かれてる。いつか、橘さんも唄に惹かれる。
俺が割り込む、所はない。