唄をナンパ達から庇って、橘さんが怪我をし、手術が終わった時だ。


「手術が終わっても…グスっ…痛いに…グスっ…決まってるじゃないっ!」


唄の泣く姿を見て、俺の心に唄を傷つけてしまった後悔の痛みを感じると同時に、自分でも分からない何かがグサッと突き刺さった。


「…悪い。心配かけて。もう大丈夫だから」


橘さんは、唄の頭を撫でながら慰める。


その瞬間を見て、俺は嫉妬してしまった。


唄の頭を撫でるなんか、俺は緊張して中々出来ないのに、橘さんは躊躇(ためら)うこともなく、頭を撫でる姿を見て、正直嫌だった。


その後のやりとりを見てるのも、正直辛かった。


今まで見たことがない唄の赤面した顔や、橘さんが優しく唄を見つめる眼差しが、悔しくて悔しくて拳を握りしめていた。


だけど、橘さんは俺が守ろうとした唄を守ってくれた人。俺たちに巻き込まれて怪我をしてしまった人。なのに、苛立ちと悔しさが邪魔をする。


自分の心の醜さに、失望した瞬間だった。