3年生校舎に着き、俺たちはためらうこともなく女子トイレに入る。


今思えば、入ったら変態扱いをされて気持ち悪がられるが、それよりも、唄たちの安否が心配だった。


「2人共いいところに。あたしのカバンから体操服持ってきてくれない?

あたしのせいで佳奈が濡れちゃって…」


そこには、上半身の服が乱れ、足下が濡れていて、何故か右手にホースを持っている唄と、上半身びしょ濡れになっている相原の姿が目に飛び込んだ。


俺たちは学ランを脱ぎ、唄と相原に掛ける。


「大丈夫か?!」


「ありがと。大丈夫よ」


唄は大丈夫と言っているけど、唄の小さな肩が寒そうに震えている。季節は冬。真冬に水をかぶれば、誰だって寒い。


「何があったんだ?!」


「先輩に呼び出されて、先輩がバケツの水であたしに掛けようとしたんだけど、佳奈があたしを庇って濡れたの…。ごめんね、佳奈」


唄は罰が悪そうに、相原に謝る。


当たりを見渡せば、転がっているバケツに散乱した掃除道具。個室トイレのドアがびしょ濡れになっているのに気がつく。


トイレが、その現状を物語(ものがた)っていた。


「佳奈…?」


相原が下に俯いたまま動かないで、唄が心配そうに声をかける。


俺たちも不安になり、相原を見つめた。