「お前、無理してないか?俺達を頼っていいんだ」
「僕たちは、高橋の味方だよ」
「唄ちゃん、一人で抱え込まないで…」
ライブの練習の休憩時間に、俺たちは唄が無理をしていると思い尋ねた。
唄は、俺たちに気を遣っている様な気がした。
「無理なんかしてないわよ。あんな事いちいち気にしてたら、こっちが疲れるだけよ。
それに、あの噂は全部嘘だし大丈夫よ」
唄は笑顔で俺たちに言うから、これ以上何も聞けなかった。
俺は、心のどこかで言い言いくるめられた様な気がしたけど、唄の笑顔を見て安心してしまった。
何より、“心が強い”と思い込んでしまった。
俺だけじゃない、浩平や相原もそう思ったはず。
「よし!じゃあ、ライブの練習やろっか」
唄はギターを肩に掛け合、マイクスタンドの前に立つ。
俺達も準備をし、練習を始めた。
唄は、笑顔で楽しそうに歌っている姿を見て、俺は思わず微笑んでしまった。
唄の悲しい顔は見たくない。悲しい顔をさせたくない。
このまま、嫌がらせがなくなってほしいと願ったた。
だけど、その願いは叶わず、恐れていた事件が起きた---。