「それに、亮太ならあいつを任せられるし」
「それは嬉しいな。音夜は、なんだかんだ言って、唄のこと心配してるな」
普段は唄をからかっているが、唄のことを“大切なお姉ちゃん”として見守っている不器用な所を知っているのは、俺と音夜の彼女ぐらいだろう。
「別に。そんなんじゃない。ただ、変な男に引っかからないように見てやってるだけだ」
音夜は、顔を逸らしながらアコギを弾いた。音夜は、褒められるのが苦手なので素直に受け入れられない性格だ。
「そろそろ、あいつの手伝いをしに行くか。実は、亮太と話しをしたくて、あいつだけ作りに行かせた」
「…そうか。じゃあ、手伝いに行くか」
音夜が、俺の為に話してくれた半分、少し焦りを感じた。
音夜がわざわざ俺に伝えたのは、音夜から見て橘さんと唄がいい雰囲気になっているのを知ったからだろう。
頭の中でぐるぐると考えながら、俺たちは台所に向かった。