俺は、慌てて背中を触る。指先に触れたのは、以前にも触ったことのある“感触”悪寒を感じて、体が身震いする。
「いいギターじゃの~」
何故か、俺はギターケースを背負っていた。
そのギターケースに見覚えがある。いや、忘れるはずがない。“あの頃”の俺が使っていたエレキギターが入っているケース。
一体どうなってるんだ……!
「離せッ!」
俺は、早くここから立ち去りたい一心で、じいさんの手を振り解こうとするが振り解けない。
「ダメじゃの~。あんたは、売らないといけないのじゃから~。どれを売るのじゃ?ギターか?それとも、その“声”か?」
「……っ!」
じいさんが言うのと同時に、俺の腕を掴む力が強くなった。
「いい加減にしろッ!離せッ!」
俺は痛みに堪え、睨み付けながらじいさんに言う。
「それは無理じゃの。だって、あんたはこれからも“あの日”から逃げ続ける為に、逃走資金が必要なんじゃろ?」
「----ッ!!」
その言葉を聞いて、ドクンと心臓が跳ねる。
そんな俺を見て、じいさんは歯をニカっと見せて、不気味に微笑む。
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