「とにかく俺は、孝輔が評判の悪い河村アキと付き合っていることを知らされてすごくショックだった。
はっきり言えば、死んだ母さんを思い出して… 悔しかった。
だけど、そうだよな、孝輔だって自分の考えを持っている一人の人間なのだから、俺が余計な事を言うのは筋違いかも知れない。
だけど父さんやばあちゃんたちを悲しませるような事はするなよ。
じゃあ、おやすみ。」
大輔は黙りこくってしまった孝輔の背中を見ながら、諦めて部屋を出た。
孝輔の態度には寂しくもあったが、これ以上孝輔に迫っても何も進展は無いと思った。
孝輔だって馬鹿じゃあない。
ゆっくり考えれば自分が何をしているのか分って来る。
今は,自分が知っていると言うことに戸惑いを覚えているから、言葉にならないのだ。
そう思って大輔は部屋を出た。
大輔が部屋を出て行くと,孝輔はゆっくりと顔を上げた。
その目には涙が浮かんでいる。
孝輔も大輔と同じぐらいの常識は持ち合わせている少年だ。
自分の行動が世間から見ればどんな事なのかも分っている。
高校生がラブホテル… まともな話である訳が無い。
家族に心配を掛けない、父を裏切るような行為は決してしない。
そんな事は大輔に言われなくても心に秘めていた。
自分は確かに母さんっ子だったが、二年前のあの事件以来、自分の心は大輔と同じだった。
それなのに、いつの間にかあの母と同じような事を、それも高校生のくせに…
大輔の言葉が胸に突き刺さった。