母の死後入試があり、孝輔は希望していた暁名城高校へ受かったが,心から喜んでくれたのは大輔一人だった。
祖母たちは,名古屋まで通うことへの不安が先走っていたし、父は、自分が希望して受けたところに受かったという,事実だけを喜んでいた。
どんな学校か、と言うことには無関心のようだった。
口にも顔にも出した事は無いが、孝輔は一年の秋頃から自分はこの家では無用な金食い虫、と言うような疎外感を抱くことがあった。
特に最近、自分に自信を失っている孝輔にその思いは強い。
それでも今までは自分の中に隠し、何気なく装ってきた。
おとなしい性格故に、そういう気持を表わす事が出来なかったのだ。
それから一週間、孝輔は腕の調子が芳しくない事を理由に学校を休み、家族の目を気にしながらも,アキとの逢瀬を楽しんだ。
四六時中一緒にいたかったが… とにかく性に目覚めた孝輔はすっかりアキの男気分で、それまで貯めた小遣いを持っては岡崎近辺のラブホテル通いをした。
18歳未満お断りと書かれた文字など見えないような顔をして、いや、アキはどう見ても実年齢より上に見えるから,堂々と後を付いて部屋に入っている。
不思議な事に、初めこそ指導権を発揮して、孝輔を翻弄していたアキが、この一週間孝輔の言い成りだ。
が、何事も初体験、女に対してして無経験の孝輔はその成り行きに満足し,有頂天になっている。