キーンコーン……。

「あ、もう終わり!?」

「はやーい」

そんな私のお兄ちゃん話をしてる間に、貴重な昼休みが終わる予鈴が響く。

 午後の授業は夏の予習のお陰でさくさく進み、鼻歌気分だった。わかるって素晴らしい!

あー、これなら次のテスト楽しみだわ〜。
なんて自由と引換に手に入れた満足感に浸りながら、手にした箒を動かす。掃除すら楽しい気分。

「須田、何にやにやしてんの?」

 長い箒に顎を乗せて、小首を傾けたクラスメイトの長谷川 亮太(ハセガワ リョウタ)に突っ込まれた。

「べ、別に」

 変な顔を見られた気まずさに声が裏返る。

「変なヤツ」

 鼻をくしゃっとさせて、大きな口を開け、あははっと長谷川くんはまさに少年らしく爽やかに笑う。

 少し人見知りするあたしはあんまり男子とうまく話せないんだけど、長谷川くんはどんな相手にも人懐っこくて仲良くなっちゃう仔犬みたいな話しやすいタイプ。

 少し茶色い短髪。前髪はツンツン立て、まさにスポーツ少年という感じ。たしかサッカー部だったはずだ。笑うと垂れる大きな目。大きな口。

 なかなかの可愛らしい顔立ちで上級生からも人気なのも頷ける。