大学三年。
 自分だって就活とかで忙しいはずなのに、その時間を割いてくれた。いくらお父さんとお母さんに言われたからって生真面目に。

 厳しかったけど……。
お兄ちゃんは笑顔で怒る。怒鳴られる方が怖くないと身に染みて実感した夏だった。

「俺のみてる生徒の方がまだ出来るね」

 って小さく呟かれた時が一番恐ろしかったな。お兄ちゃんが家庭教師のバイトしてる子たちはたしか小五と中一だったはず。

 でも、見捨てないで最後まで見てくれたし、本当に感謝している。

「その上超絶美形なんだよねー」

えーー! 見てみたいー!

再び上がる黄色い声。
由真は家に何度か泊まりにも来ていて面識がある。普通、こんなふうに言われて実際は大したこと無かったりするけど、お兄ちゃんの場合はかなり期待を裏切らないから、私も何にも言えず、笑って誤魔化すことにしている。

前にお兄ちゃん見たさに何人もクラスメイトが家に来て困ったことがあった。その時はさすがにお兄ちゃん迷惑そうだったし。
なぜかファンらしき人達もいたり!
たまに出待ちのように家の前にいたりするのだ。お兄ちゃん、ただの大学生なはずなのに……。謎多き男なのだ。