「俺――ずっと憧れてた。八重子さんと毅叔父さんが作るような、あったかい、明るい家庭」

 隣から
 直に伝わる体温。
 響く心音。

「それを、俺は……千衣子と作りたいと思ってる」
 
 手を離し、ゆっくりと膝をついて頭を下げた。

「毅叔父さん八重子さん。僕にお嬢さんをください」
 
 テレビドラマで使い古されたセリフが新鮮に耳に響く。

 お兄ちゃんがあたしをお嫁にくださいって言ってる――少し呆けてから、やっと繋がるシナプス。

 何いってるの!? お兄ちゃん。
 緊張と喜びを越えた衝撃が体に走った。

 え、本当に? 本気で!?
 まさかドッキリみたいに冗談とか……?
 なんて、そんなこと言えない空気に観念する。

 お父さんと母さんの顔を見る勇気も湧かないまま、少し迷った後、あたしもゆっくり膝を折り隣に座った。