「そっか……。わかった」

 悲しげに長い睫毛を伏せる。
 え――?

「俺が今日帰る為にどんだけ徹夜してきたか。他の役立たずなチームメイトに後を任せて、無理無理飛んできたなんてこと関係ないよな」

 そうなの!? 知らなかった……。ゆっくり頬からお兄ちゃんの手のひらが離れていく。

「待ってるとか言って。……そのうち身近な若い男と出来てたりするんだろ?」

 顔を背けて言う声が震えてる。本気なのか冗談なのかわからない。 

 確かに……家族感が抜けなくて妹気分で甘えていたのはあたしの方だったのかも。

「ご、ごめん。あたし、そんな風に不安にさせるつもりなくて。……他の男なんて有り得ないし!」

 慌てて哀愁漂う背中に断言する。

「これからはお小遣いちゃんと貯めて、電話したり遊びに行けるように頑張る! そうだ。あたしもバイトして――」

 這うように近づいて、顔を覗き込む。と、悲しみく落ち込んでるはずのお兄ちゃんの目は悪戯に光っていて……次の瞬間あたしは唇を奪われていた。