「離れて会えなくてもどかしくて苦しくて……。そんな迷いあっさりと消えたよ。チィは俺がやっと見つけた存在理由だから」

 何だか凄いことをさらりと言われて、甘く爽やかな囁きが耳に溶けていく。骨抜きという言葉を理解出来た気がした。

 美しすぎる顔立ちが徐々に近づいてきて。数センチ前で――止まった。

「チィはどうなの?」

「へっ!?」
 
「俺の本気が少しでも伝わったなら、チィも答えてくれないと」

 キス直前のお預け状態。改めて言われると火を吹くほど恥ずかしくなる。

「チィ?」

 赤くなって黙りこくってると目の前の艶かしい瞳が催促する。

 この人は絶対Sだ。

「チィも電話してくれたらよかったのに」

 恨みがましく見るのはやめて。色っぽすぎるから。

「だって、時差だってあるし、そもそも電話代が……」

「なら会い来てくれてもよかったし」

 子どもみたいに口を尖らせて言う。そんな表情も似合うのが憎い。

「そっちのが無理でしょ!」

 学生で脛かじりまくってる身分では電話も海外旅行も夢のまた夢だ。

 お兄ちゃんだってわかってる。はず……。