「なん、で…あたし死ぬのに…」
美鈴は声を詰まらせながら言った。
「俺は今、目の前にいる松木美鈴が好きだ! 病気がなんだよ!? そんなんで俺は美鈴を諦めること出来ねぇよ…」
急に視界がが歪む。
情けねぇな俺は。
女の前で泣いてんじゃねぇよ…
そんな俺の顔を美鈴は
じっと見ていた。
「あたしのために…泣いてくれるの?」
美鈴は俺の涙を親指で触った。
「あたしね…本当は怖いんだよ」
美鈴の口から弱音が漏れる。
美鈴は両手で
俺の顔に触れる。
俺の存在を確かめるかのように…
「一人で死にたくないよ…」
美鈴の手から伝わってくる暖かいぬくもり。
俺は失いたくないと思った。
美鈴を正面から抱き寄せる。
美鈴は子供のように泣いている。
そのあと、美鈴が口にした言葉は今でもはっきりと覚えている。
「ねぇ、あたしちゃんと…生きてる?」