俺は、何も言えなかった。

何を言っても、美鈴に情けをかけているような言葉しか出てこない気がしたから。




美鈴はいつも笑っていた。

でも、美鈴の笑顔の裏にはそんな過去が隠れていたなんて。




「あたしね、誰にも言ったことなかったんだ…病気のことも、妊娠のことも」


美鈴は俺に背を向けて言う。


「同情なんていらない…そう思ってたから」



美鈴の小さな背中が震えている。




「ねぇ、星夜くん…」

「…ん?」


俺は震えている美鈴を見ていられなくて、下を見ながら短く返事をした。

美鈴が振り返って俺を真っ直ぐ見た。







「星夜くんが好き」


そう言った瞬間
美鈴が俺に抱き着く。




「少しだけ、お願い」



今にも消えてしまいそうな声は耳元から聞こえた。