なぁ美鈴。
なにも知らなかった俺は、
美鈴といる時だけ
"生きている"と感じてた。
でも、当たり前だよな。
美鈴は"生きたい"と、
願っていたんだから。
美鈴にとって、
"生きる"は、必死で。
"明日"は、喜びで。
"空気"は、探して。
"未来"は、願っていた。
そして、
美鈴とバイトをした日から
数日が経っていた。
今日は美鈴が大学を休んだ。
理由はよくわかんないが
少し残念だ。
なんて、思いながら
バイト先に向かって
歩いていた。
「せーやくんっ」
ん? 誰か呼んだか?
後ろを振り返ると
小さな体を全力で
動かし走って来る美鈴がいた。
「みっ、美鈴! なんで」
「はぁ…はぁ……」
息を切らしながら
俺の元に来た。
「はあ…ね、ねぇ」
美鈴は息を切らしながら
しゃべった。
「どーしたんだよ」
「あ、あそ…はぁ、ぼ…」
途切れ途切れで
よく聞こえない。
「だーからっ! あそぼっ」
そう言って俺の腕を引っ張った。
「ちょ、これから!? 俺は今からバイトだし」
「遊園地行こ! バイト休んでっ」
「遊園地!? 馬鹿言うなよ、休めるわけ…」
「お願いっ!!」
その時の美鈴は
何かに怯えている
そんな目をしていた。
「な、なんか…あったのか?」
「別に! ただ今行きたいの!」
美鈴は強引に俺の腕を引っ張った。
こんな美鈴を見るのは
初めてだった。
必死なのはすぐにわかった。
だって、美鈴の笑顔が
笑顔じゃないから。