西棟302号室。
俺は病室の前で立ち止まった。
俺の隣には小刻みに震えている晴がいた。
「おい、晴香。大丈夫かよ」
すると、俺の服を思いっきり掴んで晴は言った。
「西棟って…重病患者が入院する所だよね?お婆ちゃん、この病院の西棟に入院してたから知ってるよ…。どういうこと?美鈴ちゃんがここで入院て、どういうこと?」
俺の服を引っ張りながらそう言った晴の手を一貴は掴んだ。
「やめろ、何も言うな。美鈴ちゃんから聞くためにここに来たんだ。悪いよう決めつけた言い方はやめろ」
こんな顔の一貴を見るのも初めてだった。