先輩のことを考えすぎたせいで、次の日の朝は見事に寝不足だった。
『おはよ~』
『おっはよー!』
寝ぼけた声の叶香とは大違いの由香。恋するとこんなに元気になれるのか、と感心しつつ、いつもの電車に乗り込む。
「次は~西松本~西松本~」
昨日、先輩が降りた駅。ふいに窓の外を見てしまう。
『あ、先輩だよ!叶香!』
『嘘でしょ』
先輩の姿をふいに探してしまう。すると扉が開くと同時に先輩が乗ってきた。
『う、そ』
『やばいよぉ、嬉しすぎ~』
はしゃぐ由香を隣に、叶香はまた先輩をずっと見つめてる。
『先輩…』
『叶香?やっぱ恋だね。好きでしょ』
赤くなったほっぺを突っつかれた。
『や、やめてよ!別に好きじゃないし』
精一杯意地を張ったのに由香にはバレバレだった。
『先輩に恋、しちゃったんだね』
『そ。だからあたしとはライバルだね』
『え~やだよぉ。絶対無理』
『出た、叶香の口癖。』
『だって絶対負けるもん、由香なんて』
『勝負って思うから駄目なんだよ』
由香がそっと微笑んだ。
『え?勝負じゃないの?』
『うん。あたし告白する気ないし』
『そっかぁ』
なんだか一気に気が抜けた。
『あ、なら来週、メアド聞こうよ!』
『えぇー。無理無理』
『やってみなきゃわかんないでしょ』
ほんとはめちゃくちゃ嬉しかった。由香が誘ってくれて、背中を押してくれて。
先輩と話せるって考えただけで胸がドキドキして気が狂っちゃいそうだった。