「フン!」

デスペラードは鼻を鳴らすと、加奈子の体の調子を確かめながら、周囲を見た。

「ここは…イオナの世界か…。成る程〜壊れてきているな」

そして、口許を歪めた。

「天空の女神にすべての力を奪われたが…我の力のもとは、すべての生物の絶望!」

タキシードの男は、笑った。

「この世界が崩壊し、すべての人が絶望した時…一人一人に闇は生まれる」

「そのすべての闇を食らえば…我は容易に復活する」

「九鬼真弓の肉体がなくてもな」

デスペラードとタキシードの男は、笑い合った。

「人間の闇こそが、この世で一番淀み…濃い!」

「それを提供してくれるのも、人間だとはな」

「互いに憎しみ合い、闇をつくればいい」

タキシードの男がデスペラードに近づくと、2人は融合した。

「この世界に、我を脅かす存在はいない」

「この世界の崩壊を早めてやろうぞ」

加奈子の体から、デスペラードの闇の魔力が溢れ出す。

「それは、できなくてよ」

デスペラードがいる廊下の先から、声がした。

「誰だ?」

振り向いた瞬間、デスペラードの目を光が射抜いた。

「ま、眩しい!?」

廊下中が光り輝き、そのあまりの眩しさに何も直視できない。

「な、何だ!この光は」

デスペラードは絶句した。

加奈子と同化したデスペラードの指先が、消えていくのだ。

「ただの光ではない!た、太陽のバンパイア!?ラ、ライか!い、いや!赤星浩一とかいうやつか!」

「失礼ね」

光の向こうから、声がした。

「レディをそんな人達と間違えるなんて」

「お、お前は!?」

光の中から現れたのは、学生服を着た男子生徒だった。

「光に照らされない闇は、ないわ」

男子生徒の唇に、笑みが浮かぶ。

「こ、この私が!こんなところでえ〜!」

デスペラードの体は、光の粒子を化して消えた。

すると、廊下全体を照らしていた光も消えた。

「ふ〜ん」

男子生徒は鼻を鳴らすと、廊下に倒れている加奈子を見下ろしながら、後ろに話しかけた。

「ねえ〜。この程度の闇が女神なの?」