何年もずっと待った。
一本の電話。
自宅への電話。
「もしもし」
「もしもし?」
女の人の声。
遠い昔、大好きだよ、と言った、あの人の声。
逢いたいと何度も願った彼女の声。
好きな、好きな、大好きな彼女の声。
「逢える、やっと、逢えるよ」
彼女が電話の向こうで言った。
泣いているような、はしゃいでいるような。
「愛?」
彼女の名前をつぶやく。
彼女が、「私の名前を、呼んで?」と言った気がしたから。
「うん、あたし。愛。」
キラキラした声。
「あ、お姉ちゃんが呼んでるから、またね」
いつ?いつ帰ってくるのか聞きそびれた。