香織は冷たいものが飲みたくなったといって、ドリンクバーでオレンジュースを取ってきた。
「今後の進展はなさそうなの？」
　急に真剣な顔になった香織は私にそう言った。
「たぶん、もう会うことは無いんだと思う。」
「詳しく聞かせてよ。その彼のこと、、。」
　普段あまり他人のプライベートを干渉しない香織が妙にこの話の奥行きを求めてきたので、私は全てを話すことにした。勇の全てと一緒に過ごした一週間に感じた出来事のすべてを。
　彼の声を最初に好きになったこと。
　彼が、自分に会ったらきっと魔法が解けると言った事。
　彼の火傷の痕、、。彼の作り出すガラスのこと。
　昔の写真のこと、、。
　思い出を閉じ込めた小皿のこと、、。
　今も身に着けている小さい花のネックレスのこと。
　その全てを私は香織に語った。
「好きなの？その人のこと。」
　香織はストローのつぶれた先を指で直そうとした。
「解らない。」
「どうして？やっぱり見た目がもう理想じゃないから？」
「違う！」
　私は首を振った。違うって、、私は何度も心の中で反芻した。
「じゃぁ何が不満なの？それとも不安なの？」
　私は言葉に詰まった。
「あたしが思うに美鈴は一生その勇さんの姿を愛してゆけるか、それを不安に思ってるんじゃない？」