ゲートに近づき勇は私にこう言った。
「ありがとう、こんな僕のそばにいてくれて。本当に楽しい一週間だったよ。」
 勇が私と同じ思慮を浮かべていたということを知り私は少しいたわしい気持ちになった。
 もしも私たちの運命に、お互いの気持ちを抑制する問題が何一つ存在しなければ、もっと素直に求め合うことが出来たのだろうか、、。
 勇は私に手を差し伸べた。握手なんて何年ぶりだろう、、。
強くにぎりしめられた手から体温が伝わった。
そしてゆっくりとその手が解き放たれていった。
「さようなら。」
「さようなら、、。」
とても辛くてやりきれない思いだった。
私たちはもう二度と会うことが無いのだろうか、、。
私は手を振り、ゲートをくぐった。そして私は決して振り返らなかった。振り返れば辛くなるだけだから。目を閉じてそして思い浮かべた。あの写真の勇を。さよなら、そしてありがとう、、。私は夢の世界から現実へと引き返した。
 飛行機の中では来た時と同じように、私は雲を眺めた。この雲の下の何処かに勇がいる、今まで少しも抱くことの無かった感情だった。誰かのことを心に懸けるなんて。意識から全て消える瞬間が無いなんて、忘れないようにしようともしていないのに、とても不思議だった。だけどそれはとても喜ばしい感情でもあった。飛行機の速度は速すぎて、一分間に何キロも二人の距離を遠ざけた。私はポケットの中のトンボ玉を握り締めた。その手を広げそれを見つめた。  これが勇の心?深い青と水色が半分に溶け合うガラス球。勇の心の姿や形をあらわしたら、こんな色をしているのだろうか、私は心の姿や形を想像した。痛みを抱えた勇の心、青と水色のその心にはもっと他の色が必要だった。理想の色に近づけるには、もう一つ、、。