私は声を漏らした。
「沖縄料理って意外と癖のあるものとか多いから、自分の経験上、東京と沖縄の料理の中間を取った創作料理を作ってみたよ。」
　勇は笑っているようだった。私はありがとうと勇に言った、だけど勇の顔を直接見上げることが出来なかった。
私たちは食事をした。幻想的なアトリエの中で、美しいガラスたちに囲まれて。静にゆっくりと、ただ不思議だったのはただそれだけで、なぜかとても満ち足りた気分になったということ。ガラスたちはどんな高級なレストランよりも上品な美しさで私の中の見えない何かを満たし、癒してくれた。
だけど心に強くある物は、勇への質問だった。その怪我は、もう治らないの？その顔で、これからずっと？その瞬間ふとマネージャーのことを思い出した。
「今日はデートなんで先に帰らしてもらってもいいですか。」
　仕事が早くに終わったある日彼女は私にそう言った。
「別にいいけど。」
　そんな言い方をした私に彼女は喜び礼を言った。
　彼女と釣り合いの取れる男なんて、きっとたいしたことのない男だろう、、。私はそのときそう思った。
　今思い返してみると、よっぽどひどいのは私のほうだった。
　つりあいの取れる女、大したことの無い人間。あの時の私は一体何を見ていたのだろう、何を思っていたのだろう。そして今なぜ私はそんなことを思い出したのだろう。
　頬を涙がつたった、我慢して溢れた涙は、水玉のように丸いしずくになり、私の右手の甲に落ちた、、。
「どうしたの？」