「琉球ガラスを作ってるの。」
「そうなんだぁ。琉球ガラスなんてあたしあんまりわからないけど、いいね職人さんなんて。でどこで知りあったの?」
「うん、ネット関係で知りあったんだ。」
「ネット?もしかして!出会い系?」
「違うよ。」
 出会い系、確かにそういう呼び方をするのも過言ではないとどこかで感じた。
「違うけど、ネットで知り合うって言ったらそう思われてもしかたないかぁ。」
 香織はなんだかうれしそうに笑いながら、話の続きを促した。
「で、その人は何歳なの?美鈴の心を動かすぐらいだから、やっぱカッコいいんでしょ?」
 そのとき初めて気がついた、私は勇の歳も知らないことに。
「あ、歳聞くのも忘れちゃった。顔も、実はまだ見たことないの。」
「え、なんでそんな人のことが気になるの?」
「解らないけど、凄く綺麗な声をしてた。夢も持ってたよ。」
「そうなんだぁ。」
 香織はそこで小さなため息を付いた。
「気になるって言うから、もっと具体的なこと言うのかと思った。なんか残念。」
 香織の期待に副えなかったことよりも気がかりだったのは、今の私は勇と言う存在を認めただけで、そのこと以外の何も知らないという現実だった。今の私たちはたまたま水面にぽっかりと浮かび上がった泡と同じで、いつお互いの記憶から消えてしまってもおかしくはないくらいの重さでしかない。
「彼は沖縄に住んでるの。」
「沖縄?それも遠いいね。すぐに会ったり出来ないじゃん。」
 その通りだった。
「それに顔だって知らないんだよね。」
「うん。」
「前に言ってたみたいに、かっこ悪いやつだったらどうするの?」
「それは。」