香織 「なんだか運命の出会いみたい、、。」
いさむ「そうだね、あれはまさに運命だった。もしもあの時あの瞬間雨が降っていなかったら、お互いきっとすれ違っただけだろうしね。」
 〝もしも″感慨深いフレーズだった。思いがけない出来事は時として幸せを運んでくることもある。悲観的な考え方しか出来なくなっていた私にとって、いさむの話は癒しを与えてくれた。
いさむ「もしかして、日本人の方ですか?彼は僕にそう話しかけてきた。僕はすぐにそうだと答えた。彼ももともとは東京の人間で、町の魅力に取り付かれ、そこで生活を始めたんだといっていた。彼とは今でもたまに手紙で連絡を取っているよ。」
香織 「ロマンチックな話ね。ちょっと聞いていい?いさむくんは外国の言葉は話せるの?」
いさむ「残念ながら。僕はほとんど話せないよ。」
香織 「怖くないの?」
いさむ「そうだね、怖いときもある、困った時もね。もちろん気苦労は耐えなかったよ。でもね。どうしても見たかったんだ。そして知りたかった。」
 そのとき、残りのポイントを知らせるアラートがなった。
香織 「もう時間?」
いさむ「そうみたいだね。」
香織 「また、続きを聞かせてくれる?」
いさむ「うん。もちろん。」
香織 「うん、それから、私ももっとガラスのこと知っておくから。」
いさむ「ありがと、香織ちゃん。」
 いさむが始めて私の名前を呼んだ。本物の私ではない名前を・・・。
香織 「ねぇ、あたしの本当の名前。」
いさむ「えっ?」
香織 「私本当は美鈴って言うの。」
 一瞬考えるような沈黙があった。
いさむ「そうだよね。仕事だもんね、でもいいのかい?そんなこと僕なんかに教えちゃって。」