いさむ「チューリッヒでトランジットして結局プラハ郊外に付いたころには夕方になっていた。僕はそこでホテルをとって、次の日に町のガラスの工場やお店屋さんなどを見て廻ることにしたんだ。いろんな店が並んでいた、雑貨屋にパン屋、本屋に、カーテン専門の店なんかもあったよ。僕はガラスの専門店だけでは無くいろんなものを見て回った。その日は、くたくたに歩きつかれてホテルに戻ったんだ。ホテルのテラスから外を眺めると、その夜景はそこでしか味わえない最高の眺めに感じたよ。そして次の日も僕はチェコ国内を移動し、この目にいろいろな物を焼きつけて廻った。」
 目を瞑った私は、その世界にゆっくりとトリップしていった。見知らぬ町に立ち並ぶ店。
異国の地で過ごす一人の夜は一体どんな物なのだろう。私は少しずつ、いさむの記憶を共有してゆくのを感じた。その想像は何処まででも膨らんだ。
いさむ「それからプラハ近隣を何日もかけて見て廻る途中プラハ中央駅に立ち寄ったんだ、駅の窓にもステンドグラスをつかったコンコースがあって。それは国の表玄関にふさわしい素晴らしい雰囲気をかもし出していた。あの美しさと空気をきっと僕は一生忘れない・・・。」
 彼はその時の記憶を、大事に抱え続けることを私に誓ったようだった。もしもいさむと一緒にそれを見上げることが出来たのなら。
いさむ「それから僕は旧東ドイツのドレスデンに向かった。電車を降りると、にわか雨が振り出したんだ。僕はそのとき傘を持っていなかったから、小さな町のレストランに駆け込んだんだ。するとそこで、その店で働いていた日本人に出会ったんだ。」