私はそう言ってメニュー表を店員の方に向けて指を指した。
「これください。」
 私は青い色のカクテルを注文した。私は青が好きだったから。
ドリンクの名前なんかもう覚えていないけど、それはとても綺麗な色をしたカクテルだった。
「じゃぁ僕は生ビール。」
 店員はかしこまりました、と丁寧に頭を下げホールに戻って行った。
「今日は本当に香織ちゃんに逢えて嬉しいよ。」
 出会って何分もしていないのに、いったいこの人は何回うれしいと私に言ったのだろう。それが本心からの言葉なのか、それともとりあえずの言葉なのか私には解らなかった。
「僕さぁ、町田美鈴結構好きだったんだよね。眼鏡かけてても香織ちゃんほんと、町田美鈴ににてるよね。実際あってそう思ったよ。」
「またその話?」
 思わず私は声を荒げてしまった。
「ごめんごめん。香織ちゃんは香織ちゃんだよね。」
 人に気を使わせるのは慣れっこだったけど、私はそこで自分の気持ちを抑えることにした。
「そう私は私。しょっちゅう言われてて、あたし本当にいやなのに。あんな女に似てるなんて言われて。」
 何が私は私だ。自分で言って可笑しくなるような、それでいて少し自虐的な気分にもなったけど、私はそうはき捨てた。自分自信をあんな女とののしって・・・。
「確かに、あの事件は僕もびっくりしたよ。あんなに売れてる子が、男きり付けちゃうなんてさぁ。しかも振られた腹癒せとか週刊誌に書いてあった気がする。何で男なんかの為にそんなことを?ってあの時は思ったけど、可愛くても、やっぱりただバカだっただけなのかもしれないな。」
 そうじゃない・・・。
 ここで否定が出来ればどれだけすっきりするのだろう。それは考えても無駄なことだった。