『悠紀…ってさ、ゆうき、じゃなくて、はるのり、て読むんだね』

花野との最初の会話は、これだった。
同じ学科で同じクラス。
いまいち馴染めなかった俺は、まさか1番最初に話し掛けられるのが女子だなんて思ってなかったから、焦った。

『あ、うん。…えっと、春永(はるなが)さん…だっけ?』

にっこり笑う君の笑顔は、とても魅力的で。

『うん。春永花野。はる、って響きいいよね。苗字、なんて読むの?』

整った字でルーズリーフに、日沖、と書く。

『ひおき。そのまんまだよ』

『日沖悠紀くん。よろしく』

明るい声とはっきりとした言葉。女子はみんな弱いイメージがあったから、俺は花野のまぶしいほどの元気さに憧れた。