足立の廃校を根拠としていた垣崎二佐の遊撃部隊から、存在を察知されたとの連絡を受けた鹿島二佐は、かねてから想定していたプランを電話で曽根崎政務次官に伝えた。

 そのプランを聞いた曽根崎は、

(ここでも同士討ちをやらせるのか?)

 と、眉をしかめた。

「犠牲が大きければ大きい程、達成される大儀の意味が国民に伝わります」

(証拠隠滅の意味合いもあるのだろうが、余りいい気分ではないな)

 鹿島は曽根崎次官の言葉を聞いて、今更何を言うんだという思いが湧き、腹の中で罵っていた。

 彼等は所詮、失敗しても自ら責任を取るような事はしないだろう。軍人は別だ。常に最後の責任を己の死で償う心構えでいる。

 不承不承といった感がありありと伝わっては来たが、今はまだ曽根崎の力が必要だ。

「では、次官から大臣へお願い致します」

(ああ、どうせ実行部隊の選別はもう済んでいるのだろう?)

 曽根崎の問いには答えず、鹿島は電話を切った。彼はそのまま横浜に居る園田の番号をプッシュした。

「うまく行ったようだな」

(はい……)

「予定より早く遊撃部隊の存在が知られてしまった」

(……)

「判っているな」

(はい……)

「今度は習志野や横浜のようには簡単に行かないと思うが、この犠牲によって我々の義挙をより鮮明に出来る……」

(はい……)

「園田、あと一歩だ。彼等や君達だけを行かせはしない。私も後に続く……」

 園田の押し殺した気配だけが、鹿島の耳元で息衝いていた。