(どうだ、少しは色男に映っているかい?)

「まあまあね」

(あんたからまあまあを頂けりゃあ御の字だ。それにしても、こんなハイテクに囲まれてまるでマトリックスだな)

「例えが古過ぎるわよ。せめて24とかにしてよ」

(俺、あんまりDVDとか観ねえから……)

「じゃあ、落ち着いたら一緒に観ます?」

(そうだな、これが終わったら……)

 何処か場違いな会話をしている筈なのに、二人は不思議とそんな意識は無かった。いつものように捜査の話をしている感覚で、そんな言葉を交わしていた。

「突入はSATが?」

(ああ。俺達も行くが、チヨダが先陣だ。一応事前確認を済ませての話だがな。特に問題が無ければ、エースはお休みしていて貰うさ)

「踏み込む時は、必ずケータイを……」

(まるで学校へ行く前の子供みたいだな。大丈夫、言われた通りするよ)

「私もそっちへ行けたらな……」

(三山……)

「え?」

 突然、加藤は画面にケータイを向け、写真を撮った。

(ほれ、これであんたも一緒だ。俺の胸ポケットじゃ不服だろうけどな)

「写すんなら写すって言って貰えませんか。絶対、変な顔になっているんだから」

(さて、ぼちぼち着くぞ。柏原さんに代わる……)

 一瞬だけ現実世界から離れていた心が、すぐさま引き戻された……。