「さーつきぃ」

「おめでとー」


ニヤニヤとした顔を寄せる2人は、今度はキャッキャと騒ぎ始めた。


「うふーついにだよね」

「だよね!涼平くん、ついに」

「何?何のハナシ?」


すると2人は、私をサイドから挟んだ。


「涼平くんって、紗月のことずっと好きだったんだよ」

「えっ」

「みーんな知ってたのにさぁ、紗月だけ。っぷ」

「え、えっ!?」


頭がぐるぐるしてきたその時、

キーンコーンカーンコーン……


「あ、お昼っ」

「行ってらー」

「今日こそ頑張れっ」

「んっ」


私は今日もまた走り始める。小さな身体を上手く使って、人集りをくぐり抜けたその先。


「お、紗月ちゃん今日は早いね」

「おばちゃんっある!?」

「ほいっ」

「あ‥もうひとつ、ある?」


するとおばちゃんは、優しく微笑んだ。

ーー‥2つのたこ焼きパンを両手に持って、階段を登りながら考える。


「そういえば私、先輩の携帯も、クラスも知らないや‥」


なんだか、胸がギュッと縮まって。

せっかくたこ焼きパンを手に入れても、なんだか嬉しくなくて。

ーー‥その時


「これ俺の?」


片方の温かさがスッとなくなり、その行方を目で追う。


「あ‥」

「食べて良い?」


その笑顔を見ただけで、心があったかくなる。


「紗月」

「へっ?」

「また脱げてる」


後ろを向けば、3段下に置き去りにされた上履き。‥ってか、


「今、名前‥」

「顔、また赤い」


先輩はまた私の前に跪いて、


「はい、お姫さま」


ドキドキ、どきどき
心臓が煩い。


「俺、いつもココに居たんだよ?」

「え?」

「やっと‥」

「きゃっ」

「触れられる」


上履きを履くために持ち上げた左足の、膝の上に




ちゅ。




「なっ‥」

「あははっやっぱたこ焼きみたいだな、紗月は」


人を好きになるのに、時間なんて関係なくて。


「あ、今日は白?」

「っ!!もしかして」


知らないなら、これから知って行けば良い。


「紗月」


ドキドキし過ぎて、顔が熱いけど。


「俺を呼んで」

「え‥と」

「お願い」