「あんたの足の裏には神経がないのか?」


その手には、ぷらぷらと揺れる私の靴。


「土踏まずが人より深いのかなあ?」

「やー。関係ないと思うけど?」


靴って嫌いなんだよね。できるならずっと裸足でいたいくらいだよ。


「足きったね」

「ほんとだ」


私の靴下は何故かいつも左足だけ汚いの。だっていつも左足が脱げるんだもん。


「そこのベンチ座るよー」

「はーい、わっ」


持ち上げられた身体。
近すぎる顔に、また私の心臓が速くなる。


「怪我したくないでしょ?」


なんでこの人、こんなに優しいんだろう。

なんで私、こんなにドキドキしてるんだろう。


「なんか刺さってる感じとかしない?」

「だ‥大丈夫です」

「また敬語ー」


私を座らせて、前にしゃがみながら左足をパンパンと払ってくれる。

なんだかすごく申し訳なくて。


「自分でやりますっ」


立て膝で左足を寄せて、自分で払い始める。

すると先輩は、片手で顔を覆いながら私の隣に座った。


「どうしたんですか?私なら大丈夫ですよ?」

「や、その‥」


あ゛ー‥って唸ってる先輩を見上げる。


「あんたほんっとに無防備だね」

「何がですか?」


顔がちょっとだけ赤く見えるのは、気のせい?


「ねえ、ピンク‥好きでしょ」

「え?なんで知ってるんですか?」


携帯がピンクだから?
ペンケースがピンクだから?

でも、どちらも見せてない‥よね?


「あんたを初めて見た時も、ピンクだった」


んー‥?


「あんたって、2日に1回は靴が脱げるのな」

「なっ‥、」


クツクツと喉を揺らして、楽しそうに笑う先輩。


「それで、誰かに言われるまで気づかない」

「う‥」


正解なので、反論ができません。


「馬鹿でしょ?」

「あぅ」


これもまた然り。


「だから、」

「だから?、‥っ」


先輩の大きな手が私の頭に乗った途端、ほらまた。聞こえる?





「目が、離せなくなった」

「え?」





ふわりと弧を描いた瞳が、私を見てる。


ドキドキ、どきどき


なんだろう。この感じ。