「あんたってさ、たこ焼きだよな」

「ふぇ?」

「たこ焼き好きだし、たこ焼き顔だし」

「なんですとぉーっ」


この失礼な先輩は、声をあげて笑った。


「先輩は何でそんなに楽しそうなんですか?」

「りょーへー」

「え?」

「涼平って呼んで?あ、それと敬語使ったからたこ焼き1つ没収~」


やっぱり楽しそうなこの人は、私の舟からたこ焼きを奪って頬張った。


「、~っ!!」


熱かったらしい。


「わっわわ」


あふあふと空気を吸い込む姿に慌てた私は、お昼の残りのペットボトルを取り出した。


「こ、これ!」


フタを開けて差し出すと、半分くらい残っていたお茶がみるみるうちに喉に入ってく。


「わー‥ありがと。助かった。でもちょっと火傷したー」


そう言ってべーっと舌を出して笑ったから‥


「大丈夫?」


って心配したのに。


「あっ」


飲み干したペットボトルをふりふりと振って、


「間接キス」


なんて言うんだもん。


「顔、赤いよ?」


ほっぺが、熱いです。


「ちょっとは脈アリ‥かな?」

「え?」

「なんでもないっ」


そういえば、男の子と2人だけでお出かけなんて初めてだ。

なんとなく、ドキドキと速く鳴り始めた私の心臓。


「こっちの食べる?こっちのはポン酢がかかってるから熱くないよ。はい、あーん」


なんだろ、この感じ。


「美味しい?」


胸が、温かい。


「そっか。良かった」


にこにこと向けられた笑顔が。


「ソース、ついてる」

「どこ?」

「こーこっ」


それをすくった指をペロリと舐める仕草が。


「次どこ行く?」


差し出された手が。


「あの公園に入るか。白鳥いるかなー」


小さな私の歩幅に合わせて歩いてくれるその優しさが。

きっと、私の心臓を速めているんだ。


公園の階段。

なんとなく、ダッシュしたくなった。


「うわぁぁああーっ」


しかも叫びながら。


「おいっ!!」


そして頂上へ到達。


「おーい」


後ろからのっそりと追いついてきたその人は、腹を抱えて笑いながら‥


「これ」


って手を伸ばした。