僕は、ステージとなる広場に目をやった。
「あ……」
ふと、ある事に気づく。
「準備終わった?」
島野が僕に話しかけてきた。
「島野……」
「なぁに?」
「このステージ、屋根とか……。どこにも無いよな」
「そうだね」
平然と答える島野。
「楽屋も……。暑そうだよな」
「うん」
楽屋は、運動会とかに使う白いテントに、青いビニールシートが巻き付けられているだけの、簡素なモノだった。
「キツイよな……。確実に」
「うん。キツイと思う」
顔面蒼白の僕に対して、島野はいたってフツーな顔だった。
「いやぁアタシ、こう言うの慣れてるから。平気だよ」
慣れてる、の問題だけで済むのだろうか。
ジリジリとした太陽光は、確実に僕らの体温を上昇させている。
首にかけたタオルでは、とてもじゃないけど汗のしずくを受け止めきれない。
Tシャツとジャージでいる今でも、熱中症になりそうなくらいの気温なのにーーー。
何を思って、この女は“平気”と言い切れるのか。
僕より3歳年上の島野だったが、この時ばかりは「バカなのか?」と思ってしまった。