そんな感じで仕事を続けていたある夏の昼下がり、事務所から電話が入った。
「おめでとう」
電話ごしの社長は一言、そう言った。
「え? 何がですか?」
「決まったよ」
「何ですか?」
「夏休みの仕事。一週間行ってもらうから」
「は!?」
一週間の仕事ーーー。
それは、すなわち『遊園地に一週間、泊まり込みでショーをする』と言う、事務所の夏恒例の営業だった。
デカイ仕事なので、毎年選抜メンバーで行くそうだ。
「はぁ……。ありがとうございます」
僕がその時感じていたのは、信じられないくらいの、むせっかえる様な“暑さ”だった。
あのクソ暑いスーツを、一週間も着続けるのか!?
そんな事しか、頭になかった。