輝の話……というか、ほぼ自慢話を聞かされ、うんざりという頃。
ようやく開店の時間がきたようだった。

『そうそう。 さっきの質問だけど、僕には答えられないな』

さっきの質問?
それって一時間前の「たいようの家」の事ですかい?

『本当に知りたいなら、自分の足を使った方がいいね』

つか、答えるの遅いっつの!
最初に言っててくれたら、猛ダッシュで逃げたってば。

『じゃあ、輝によろしく』

なんて、最後は爽やかな笑顔を見せて店内に消えていく。

……何なんだアイツは……

輝を嫌ってるわけじゃないみたいだけど。
つか、逆に愛しすぎ?みたいな。


「自分の足で」かぁ……
それは名古屋まで行けって事だよね?
人事だと思って簡単に言うな。

一回しか行った事のない土地だし、新幹線で3時間もかかるし……

もう……
私にどうしろって言うのよ……












『おっかえり~』

アパートに帰ると現れたのは、ご気楽な輝の笑顔。

誰のせいでこんなクタクタになってると思ってんのよ。

本当、こいつには振り回されっぱなし。

『ねぇ…… 昨日、私が気を失ってる時なんだけど……』

この能天気野郎が「嫌われのが恐い」なんて有り得ないでしょ。

『輝、そん時に何か喋った?』
『さぁ? 突然だったから、とりあえず何回か名前呼んだかな』
『名前だけ? ほら、「何かが恐い」とか……』

何となく、「嫌われるのが」とは言えなかった。
聞くのが恐いような……そんな感じ。

『言ってないよ。 声出したのは名前ぐらい』
『そ、そっか』

あれ?
笑顔なんだけど……

愛想笑い……?

『ごめん、変な事言って……』

ヤバいよコレ。
絶対、言ってた……