旅行で一日空けただけの部屋が、何だか懐かしかいような気がしてフッと力が抜けた。

まだ智志は仕事。
輝もついさっき出張先へ、車を走らせていった。

急に押し寄せた現実感に、寂しさを感じた。

机に乱雑に置かれた雑誌を手に取り、ベッドに寝転ぶ。

可愛いワンピース。
流行りのジャケット。

欲しいものは沢山あるのに、肝心の仕事がないから、つねに金欠病……なーんて。


ふと、雑誌に出ていたモデルを見て、さっき会ったホストを思い出す。

だってこのモデル、あいつに似てるんだもん。
あの咲耶に……

なぁんか、イヤミな奴だったけど。
お店にいた頃の輝を確実に知ってるのは、あの人しかいないんだよねー……

「落ちた」とか言われた手前、二度と顔見たくないけどさ……

でも、仕方ないのかも。
ゲームに勝つためには、あの人を頼るしかない気がするもんね……

『よし!』

そうと決めたら、情報収集。

咲耶がちゃんと話してくれるように、ご機嫌とらなきゃだよ。

携帯を取り、充電器をさす。
輝を調べた時と同じように、店のホームページや、どっかの掲示板を見る。

「出張ホスト」として裏で動いてる輝より、咲耶の情報は簡単に手に入った。

誕生日、血液型。
趣味も特技も、本名さえも……

どれだけ調べても、輝の情報は出てこなかったのに……
何だか咲耶のが人気みたいな気がして、悔しいよ……